◆俸給


今回は海軍さんのお給料について、どーでもいいことです。
帝国海軍士官といえば、全国の秀才から選りすぐったエリートであります。
社会的地位も高く、処遇も大変に良うございました。
旭日艦隊で一番の高給取りといえば、やはり大石長官です。
海軍大将の月俸は550円です。
……昔の金額が現在のいくらに当たるかというのは、なかなか難しいですね。
当時と今では暮らし向きも違えば商品価値も違います。
物価指数や貨幣価値ではわかりにくいので、他の職業の月給と比較してみましょう。
昭和八年、教員の初任給は50円でありました。
でもって平成十四年の教員の初任給は19万5300円でございます。
……六十九年前の3906倍と。
単純に大石さんの月俸550円を3906倍してみますと、214万8300円になります。
高給取りですねー。
でも、それだけではありません。
海軍軍人には俸給のほかにも各種手当がいろいろとつきます。
遠方に派遣された艦隊乗組員に支給される航海加俸は、日額で一円札が何枚も貰えるという大変豪儀なものでした。
もちろん、階級が上になるほど高額になります。
そして管理職手当として司令長官はその航海加俸の六割をさらに増給されていました。
それやこれやでいったい大石長官の年収はいかほどだったんでしょうか?
各種手当も含めると4000万は確実……なのであります。
中村さんと原さんも、中将で司令官・参謀長でありますから、大石さんに次ぐ高額所得者であったはずです。

比較対照として、本州勤務の陸軍伍長の俸給はいくらだったか?
月俸として10.5円、各種手当を加算してもだいたい4万円強でしょう。
いくら衣食住は軍が丸抱えだとしても低賃金ですね。
陸軍伍長殿の月給は、旭日艦隊所属の大尉さんなら航海加俸の二日分でおつりがきます。
階級によって非常に俸給に差をつけていた前世日本……後世では給与体系も改革がなされていたかどうか?
ちなみに前世日本の平成十二年の自衛隊幕僚長の月給は、59万3000円でございました……。

さてこの前世における「海軍給与令」なんですが、昭和六年のものであります。
昭和十八年に下士官兵の俸給は増額改正されていますが、士官はずーっとそのまんま。
この間に物価は二倍になっています。
物価が上がっているのにやっていけたということは、それだけもとが高給だったということなんでしょうかね?
大石長官はこのように高給取りなのでありますが、彼以上の凄い高給取りがいます。
大西洋に来ている前原司令です。
少将なので月俸417円。
潜水艦で東経40度以西、西経150度以東の地域に来ていますから、航海加俸は最高額。
同じ地点にいても、劣悪な居住環境で苦労する潜水艦乗りは戦艦乗組員の倍額をもらえます。
艦隊司令官なのでその十分の四を増額。
潜水艦加俸として将官は25円。
もしこれで亀天が千トン未満なら、このまた五割増額になったのですが。
……一ヶ月で400万円ほど稼がれたと推測できます。

潜水艦加俸の話が出ましたが、航空加俸というのもありました。
遠洋航海中の潜水艦搭載の飛行機乗りは、加俸の加俸でウハウハだったことでしょう。
それだけハードで危険な職務だったということですが。
大西洋に来た紺碧艦隊の飛行長、大竹大尉の月俸は……
大尉の俸給160円
航海加俸390円
航空加俸60円
潜水艦加俸15円
危険手当30円
……合計655円、ざっと256万円。
なんと同期生の四倍のお給料を稼いでいたのでした。
……ただね、幽霊にどうやってお給料払ったんでしょうね?
予算がおりないと思うんですが……。