◆もしだんなさまにしたら4
その一 秋の行楽シーズンも間近になりました。
今度の連休はどう過ごしましょう?
できたらどこかに連れて行ってほしいんですけど……。
▲大石さん
「ん? 今度の休み? 世間も連休なんだぞ、どこへ行っても人がいっぱいだぞ。まぁそれでもいいなら考えておいても……ところでな」
にっこり笑って話題転換。
どうやらどこにも行く気はありませんね。
▲原さん
「……目的は? 買い物か、物見遊山か、食事か」
「交通手段は? 電車か、車か」
「で、予算は? 旅館のランクは?」
「……道路地図と電話帳持ってきて」
目の前でどんどん話が具体化していきますが、なんかお仕事みたいですよ、原さん。
▲富森さん
「ふむ……あまり人混みは気が進まないが、どこか山奥の温泉にでも行くか」
この前も、その前も、その前の前も温泉でしたけど。
▲磯貝くん
「あ、そういえば折り込み広告があったなぁ」
ガサガサと朝刊の間から出してきたチラシは「××農園・ぶどう狩り・2時間食べ放題」
▲前原さん
「今度の連休? だめだめ、重賞レースがあるから」
今から競馬新聞を広げて、研究に余念のない前原さんでした。
その二 新作料理にチャレンジしてみたものの、肝心のお味はビミョーなかんじ……。
▲大石さん
「ほぉ、なんか目新しいじゃないか、どれ」
「…………」
「すまん、今日はなんだか胃の調子が悪くてな、あまり食えんのだ。気を悪くしないでくれよ」
悪びれず、にっこりとリタイア。
▲原さん
黙々と食べ、一応完食。
でも、ほんとうに無言。
強いて感想を聞くと
「うん、アイデアとしては面白いし、味付けもいい線いってるが、研究の余地がまだあるな……」
嘘の下手な原さんでした。
▲富森さん
黙々と食べ、一応完食。
いつもと全く変わりありません。
なんせ、おかずのうまいまずいをうんぬんするのは武人としてハシタナイという美意識をお持ちですから。
▲磯貝さん
「……」
一口食べて首を傾げています。
あの、やっぱりおいしくないですか?
「うーん、そんなことないけど、ちょっと変わった味だなぁ?」
でも、やさしい磯貝くん、ちゃんとおかわりまでしてくれました。
▲前原さん
「まっずぅぅ〜」
顔をしかめて箸をポトリ。
いっそ、そこまではっきり反応していただけたら、こちらも清々しいです。
お皿を下げようとすると
「あっ、いいよ、食うから! 今日は忙しくって昼抜きだったから」
ガガガとおかずをかき込んで
「……あ、慣れたら結構いけるかも」
単なる味オンチなのか慰めてくれてるのか今ひとつわからないです。
▲木島さん
一口食べて
「……おーい、そこのソースとってくれ」
料理にソースをドボドボかけて、ザザッと流し込むように食べて、おしまい。
その三 玄関の電球がもう切れそうなの。あなた〜、取り替えてくださる?
▲大石さん
「ああ、やっとくよ」
できれば、今すぐお願いします。
大石さんの安請け合いは信用なりません。
関心のないことは、すぐにどこかへ忘れる方ですから。
「……わかった、貸しなさい」
やや不機嫌になりながらも、替え電球を持って玄関へ。
▲原さん
「……もうさっき替えといたよ」
注意力満点の原さん、帰宅してすぐ玄関のライトの異常に気がつかれたらしいのです。
玄関にいってみると、電球は煌煌と明るくやけにさっぱりしています。
電球交換だけでなく、ついでに照明器具の掃除までしてくれたみたいです……。
いつもすみません……。
▲富森さん
「玄関は家の顔。電球切れなどもってのほか」
と、すぐに取り替えに。
「手の届かないところは早目に言いなさい。女の人が踏み台に乗るのは危ないから」
作業後、手を洗いながら注意半分気配り半分のさりげない一言あり。
▲磯貝さん
素直に電球を持って玄関に向かった磯貝くん。
いきなりゴン!という音がしてましたが……何が起きたか聞きますまい。
▲前原さん
「ああ、やっとくやっとく。でもまだ切れてないんだろ? だったらメシ! メシが先!」
前原さんに用事を頼むのってタイミングが難しいです。
たぶん、本人が真っ暗な玄関で立ち往生するまで替えてくれないでしょうね。