◆もしもだんなさまにしたら3

もし、あの方が家庭にいらっしゃったら。
独断と偏見による予想妄想です。

その一
甘栗はおいしいけれど、むくのが邪魔くさいんですよね。

▼大石長官
「ああ、甘栗か。かしてごらん」
そう気軽に袋を受け取って、ごろごろと甘栗をテーブルに広げて皮をむいてくださいます。
「振ってカラカラ音がするやつは簡単なんだがな。音のしないやつは、ときに……あれ、変だな? くそっ……ははは、これは失敗だ」
あーあ、潰しちゃって。
「しかしなんだな、栗といえば……」
十もむかないうちから、そろそろ皮むきに飽きたのか、口ばかり動いて手はお留守に。

▼原参謀長
「甘栗?」
袋を受け取り、ためつすがめつ点検。
「ふうん、河北省の栗か……むいてほしいのか?」
はい、あの、お手すきでしたらお願いします。
原さん、無言で栗むきにかかられます。
パチッ、パコン、コロン。
さすがに器用で手際がいい。
たちまち栗はきれいにむかれていきます。
ただし、渋皮が少しでも残ってたら気に入らないのか、丹念に徹底的にきれいにされています。
そしてむいた栗は五個ずつきっちり間隔を揃えて並べておいでです。
よく見ると、栗の向きまで揃えておいでです……。
こんなの横からひょいと取れないです……。

▼富森艦長
「甘栗?」
怪訝な顔でこちらを見られます。
「私はいいから、あなたが食べなさい」
そうおっしゃって、また新聞に目を戻されます。
そうでした、富森さんは女子供の好む「芋・タコ・南京」の類がじつはお嫌いでした。
そうでなくても、真面目な顔で新聞をごらんになっている富森さんに、栗むきしてちょーだい、なんてすごく言いにくいです。
案外思い切ってお願いすれば
「ああ、爪が黒くなるから女の人は困るだろう。私に貸しなさい」
そう、やさしく引き受けてくださるかもしれませんが……。

▼磯貝参謀
「あっ、うまそうだなぁ」
何も言わないうちから、袋ごと取られてしまいました。
あの、私にも残しておいてくださいよ。
「あ、ひとり分じゃなかったの」
あたりまえです。
あーあ、そんなぽろぽろ、コタツ布団に栗のかけらや渋皮を落とさないで下さいな。
あ、この栗、歯型ついてますけど。

▼前原司令
「甘栗かぁ……」
フッと微笑んで、手際よく皮をむいていかれます。
きれいにむけた栗の山に手を伸ばすと
「あっ」
と、非難するような声と視線が。
あの、私にむいてくださったんじゃないんですか?
「いいよいいよ、三つぐらいなら」
……ケチ。


その二
そろそろ大掃除の時期になりました。
だんなさまにもひとつ、ここはがんばってお手伝いいただきたいもの。
さて、あの方たちの役立ち度は……。

▼大石長官
力があります背も高い。
家具の移動や高いところの掃除には重宝します。
ただし、根気がありません。
監督しておかないと、すぐ怠けます。
適度におだてる必要もあります。
つまり、こちらに余裕がないと使いこなせません。
 お役立ち度★
あくまでワンポイントリリーフ。
頼む仕事をあらかじめメモしておきましょう。

▼原参謀長
几帳面なので細かい仕事も任せられます。
ただし「てきとー」という妥協案は受け入れてもらえそうもありません。
仕事に完璧を求め、また他人の仕事内容にも完璧を求めます。
いっそのこと、大掃除の采配をすべて任せてしまったほうがいいかもしれません。
参謀長変じて鬼軍曹。
チェック・指導は厳しいかと思われます。
途中でめげなければ、ぴかぴかになった家で新年を迎えられるでしょう。
 お役立ち度★★★★★
いったん仕事に参加すれば、中途半端は許しません。
お手伝いを頼むなら、覚悟を決めて頼みましょう。

▼富森艦長
年に一度のことゆえ、昔気質な亭主関白タイプの富森さんも、嫌がらず協力してくれるでしょう。
掃除を頼むなら、外回りのお掃除をお願いするのが無難でしょうか。
庭木とか網戸洗いとか排水溝とか。
普段は手の回らないところを、徹底的にきれいにしてもらえます。
これが洗面所とか台所だと、何かとこちらの管理不行届きが目に付くはずです。
そうなればつい、お小言を頂く破目になろうかというもの。
気楽な単独分業方式をおすすめします。
 お役立ち度★★★★
黙々と作業をこなす態度は、お手伝いの鏡です。
お小言はあとでまとめて頂戴いたしましょう。

▼磯貝参謀
力もありますやる気もあります、ただ……。
廊下のワックス掛け、畳の乾拭き等、根気と力のいる仕事をお願いしてみましょう。
間違っても障子の張替えなんてのは、頼まない方が無難です。
「あー!」
という情けない声が頼む前から聞こえてくるようです。
または一室をあてがって年賀状書きに専念させる、というのも一方法です。
必要なときだけ呼べば、気のいい磯貝君のことです、気持ちよく手伝ってくれるはずです。
 お役立ち度★★★
要は子供にお手伝いさせるような、寛大な気持ちで。
使いどころを間違えて悲惨な事態になったらなったで、原さんの気分を味わえます。

▼前原司令
「よーし、今日はがんばるぞ!」
もともとは働き者の前原さん、やる気モードでいてくれれば、何の心配もありません。
鼻歌まじりで楽しそうに働いてくれそうです。
多少仕事が雑でもありがたいことです。
ただ気だるそうにぼーっとしている怠けモードのときは処置なしです。
お手伝いを頼んでも、のらりくらりと生返事、あまりうるさくすると隙をみて脱走するかもしれません。
こういうときは、お買い物を頼んでしまうほうがいいでしょう。
あ、生鮮食品は頼まない方がいいですよ。
途中パチンコによる可能性が大ですから。
 お役立ち度★★
前原さんの気分次第。
年末休み中にやる気モードが到来すればしめたものですが、あまり当てにしないほうがいいでしょう。