◆大嘘つきましたm(__)m


さて『大石至上主義』も開設一年を経まして、なんやかやとSSも百編を超えました。
後世日本、という条件が付いてはいましても、旧海軍が土台にある以上、リアリティを損なうような設定・描写はなるべく避けていこう……と、素人ながらも当初から気をつけてきたつもりであります。
海軍さんなのに用語がヘンとか、慣習がおかしいとかは、けっこう気になる部分ですからね。
やかん自身、映画や本を読むとき、考証に明らかな間違いがあるとそこでズズズッと半分引いてしまう性分であります。
……とは言いながら、やかんの書いた海軍さん、じつは海軍にしてはおかしなところがございます。
もし「ふーん、そんなもんなの?」と嘘部分を信用されてた方がいらっしゃったら、大変申し訳ないことになります。
以下、やかんの嘘吐き懺悔m(__)m

日本武尊艦内での夕食シーンをたびたび登場させてきましたが……大嘘ですm(__)m
これはわかっていて嘘を書きました、ごめんなさい。
本当は艦長は常に艦長室で一人きりで食事をなさいます。
正確には給仕の従兵が付き従っていますから、ふたりきりで、です。
朝昼夕と三食、従兵を背後に立たせて黙々と寂しく食事しなくてはならないのが、艦長であります。
そのくらい艦長というのは、乗組員と一線を画した特別な存在でなければならなかったのです。
「たまにはわしも皆と一緒に食事をしたいよ」
気さくな艦長の中には、そんなことをいって寂しがる人も実際いたそうですが、孤独に耐えるのも艦長の役割であったようであります……。
また、司令部は司令部だけで食事します。
作中でのような、長官・参謀・艦長・科長が一緒にテーブルを囲む、なんてことはありませんでした。
けれど、和気藹々とした食事シーンが欲しくて、やかん、意図的に嘘をつきました。

また席順ですが、大石さんを一番上座にして、原さんと富森さん、そして副長に磯貝君、木島さん早水さんがごちゃまぜに座っている……というかんじにしていますが、軍は席順席次にものすごくウルサイところです。
階級が同じでも先任順、任官が同時でも成績順と、席を決めるにあたっては士官名簿を持ってきて序列をいちいち確認してからにいたします。
OVAでもわりにいいかげんに描かれていますが、いくら後世であっても階級がモノをいう軍組織である以上、席順にこだわらないなんてことはないと思います。

「旅順」で前原さんと富森さんが二○三高地に登るシーンで
「旅要所属で二○三高地を知らなければ……」
というセリフを書きましたが……大嘘ですm(__)m
海軍士官であれば、二○三高地に行ったことがない、なんてことはありえません。
候補生のときに行く遠洋航海、どの期でもこれに先立って必ず旅順に入港することになっています。
旅順では上陸して、脚絆に編上靴のしっかりしたこしらえで、二○三高地から水師営にかけての戦跡見学を、候補生たちは指導官に引率されていたしました。
正規の海軍士官である富森さんが二○三高地に登ったことがない、なんてはずはないのです。
遠洋航海の行き先には、期によって地中海・北米・豪州の三コースがありましたが、どのコースに当たっても、まず旅順に練習艦隊は立ち寄ったのでした。

「冬の怪談」で兵学校に伝わる怪談として、「銃クレ柳」の話を出しましたが……これも大嘘ですm(__)m
兵学校の怪談についての話がどこに書いてあったかわからなくなって、やかん苦し紛れに「銃クレ柳」の話にしておきました。
この「銃クレ柳」の話は、京都府警察学校に戦前から伝わる由緒正しき?怪談でございます……。
ここはもともとが陸軍の兵舎でありましたから、お巡りさんではなく兵隊さんの幽霊が出るそうです、聞いた話ですが。
なお本物の兵学校の怪談はといいますと、
 練兵場の「明石」マストの望楼に両手のない信号兵の幽霊が出る。
 日露戦争の戦利品のボートは雪が降ると艇首を北に向ける。
 生徒館の中央階段は卒業式の前の晩、一段数が減る。
……などで、まぁ学校の怪談はどこも似たような話でありますね(^^)